3次元プリプロセッサPの特長(2020年10月8日更新)
I Pでデータ作成する上でのヒント
- 先ず最初に、作りたいモデルの主要な寸法を決めてからデータ作成に取り掛かってください。
PはVersion.50.7 から かなり高度なGUIインターフェイス持つようになりましたが、高精度の3次元解析するには、考えながらモデルを作るのではなく、あらかじめモデルの諸元(コイルや磁性体・導体の寸法)や精密に求めたい座標と物理量を決めておく必要があります。
- 分割数・分割の位置などとなる目安を決めておいてください。
外形だけ作るCADとは違い非線形磁場解析では磁性体の内部も六面体で分割する必要があります。 六面体の辺の比(アスペクト比)には制限があります。 平べったい平行六面体や4点で形成する面が同一面になってないなど、解析に悪影響のあるものも避けなければなりません。 そのためにも、事前に分割の目安を決めておくことが重要です。
▼以下の操作はコマンド中心に説明しますが、3DモデルをクリックしてGUIで同等の操作ができます。
- 作りたいポリゴン(多角形)・ポリへドロン(多角柱などの立体)の形をgroup で指定して下さい。
同じグループ内ではgroup で指定した形以外のセルを作ることはできません。 たとえば、平面図から六面体を押し出して作りたいとき、平面図には四辺形が必要です。 この場合、平面図は、group 1 quad で作り、group 2 hexa から、group 1の四辺形を選択して押し出して作ることになります。
またグループIDは番号ではなく文字列でも作成できますので、ユニークな名前のグループを作成しておいて、他のモデル作成の部品ライブラリとして利用することができます。
GUIでは「グルーブ」と「伸張」のサブパネルで上記操作ができます。
- グループの切替え・チェックグループビューの同期を効果的に利用して下さい。
これによって、今作成したいグループ、参照したいグループのみ表示・操作することができます。 複雑なモデルを作るときには欠かすことができない機能です。 なお、group
0 は常に全グループを指しますので、これをOFFにしないと特定のグループのみの表示することはできません。
GUIでは「グルーブ」サブパネルで上記操作ができます。
- よく使う立体はダイレクトに作ることができます。
たとえば、(0,0,0)に各辺(dx,dy,dz)の長さ(1,2,3)の直方体セルを空間に作りたいとき、
rectsolid xyz 0 0 0 dxyz 1 2 1
zx平面上と平行面(y=3の平面)に 起点(2,3,5)から各辺(dz,dx)の長さ(1,2)四辺形の場合は
rect xyz 2 3 5 dxyz 1 2 1
で作ることができます。 これは、 Qmの空間セルを作るときに最もよく使います。
GUIでは「インテリジェント」サブパネルで上記操作も含めてもっと多彩で高度な立体が作れます。
- コマンドエディタウィンドウも併用して2ウェイでモデル作成することもできます。
コマンドエディタでモデルを編集する場合で、モデル表示とコマンドスクリプトの状態が同期状態であるとき、
最後の行に追加したコマンドは直ちにモデル描画に反映されます。
行の途中を編集したときなど、同期状態が崩れますが、そのときは、コマンドエディタの「同期実行」のボタンを押すと同期状態になります。
- 作成した形状モデルはPinファイルとして保存し、Qmeに形状としてはQicとして保存する。
Pinファイルは、コマンドスクリプトをそのままテキストにしたものです。 作成したモデルを修正するときに読み込んで利用します。 完成したPinをQmeのデータに取り込むにはQicファイルとして保存します。
なお、Version 5.0.58から Pinファイルを保存したとき 拡張子 Pigというファイルができます。 このファイルはモデル保存時のグループの表示状態を示すもので、このファイルが同じフォルダ内にあるとき、モデル保存時の直前のグループの表示状態が再現されます。 これによりPの状態をモデル作成作業の続きからすることができます。
特長
II 概略
Pは、株式会社シフトロックが開発・販売する
セルグリッドによる3次元幾何学形状モデル
を作成するソフトウェアです。 汎用的な3次元セルグリッドのモデル(主に非構造タイプ:以下セルモデルと呼びます)の作成ができるため、一般的な3次元形状を必要とする
非構造解析系のCAE(磁場解析・電場解析・流体解析・音場解析・・・など解析ソフトウェアのプリプロセッサとしても利用できます。 3次元モデラーやプリプロセッサは他にも多く開発・販売されているのですが、価格が高い・使用にはある程度専門的な知識が必要・
専用のマシンが必要など少なからず悩みがあります。 特に、自動メッシュが使いにくい粗メッシュ系モデルの作成、 ポリゴンを用いた基本形状の3次元モデルの作成を得意としています。 Pのコンセプトとして、以下のものがあります。
- 局所座標(円筒・直角)・コピー・移動・対称・伸張・分割・マージ(ドッキング)・変形・共有定義・多重定義・交点計算・スナップなど多機能な操作がコマンド・ GUIのツーウェイ(両方で)操作ができます。
- 単なる3次元モデラーではありません。 モデラーとは呼ばずにプリプロセッサ呼んでいる理由に次のようなものがあります。
- たとえば、直方体一つで形状が表現できても、非線形解析では内部をメッシュに分割する必要があります。 3次元内部分割を一度にする機能を持っています。また、ポリゴンの特定の辺・面を一度に分割することが容易にできます。
- 点から線、線から面、面から立体へ次元を増やして伸張しながらモデルを作成する機能があります。
- 任意3次元グリッド平面にスナップしながら図形を作成することができます。
- 一般的に3次元グラフィックスでは面の定義が外向き法線で定義されるのに対し、CAEでは物性により上・下面の区別、側面の区別ができるモデルを作ることが要求されます。
Pではこれら定義面の方向を一括変換したり、個々に詳細指定することが可能です。
- 2つの立体がその一辺の長さが1 に対して10-10 で離れていることを十分に表現できる精度も必要です。 ノードを共有している・していないという区別は解析では極めて重要です。 (磁気回路のギャップ、導通状態等の表現等) つまり、精密な本格的解析に十分耐える精度とロジックを備えています。 浮動小数点データを単に倍精度にしただけではだめです。 演算の順序と精度を落とさないよう考えたロジックが必要です。
- 解析ではよく使う、円筒座標系が局所座標も含めてほとんどのシーンで使用できます。 直交座標←→円筒座標の双変換状態で数値入力も可能です。
- バッチ処理、スクリプトのステップ実行、簡易アニメーション機能などを持っています。 単純かつ機能的なスクリプトによって、モデル作成操作がスクリプタブル(scriptable)です。
- モデル作成者のスキルレベル応じてデータが作成できます。 特に最初から、データ作成以外余分な前提知識をほとんど要しません。 データの作成方法は直感的で非常にシンプルです。
- モデル作成中、何時でもマウスでグリグリとモデルを回転・移動することができるGUIを持っています。 また、3Dの回転中心をクリック一発で設定できますので、細長いモデルでも視界から飛んでしまうことはありません。 手にとってモデルがあるが如く、3次元でいろいろな角度で眺めながら、作業することができます。
- モデルをグループという独立した座標系もつ単位の集合体として作成できますので、複雑なモデルでも部分に分け、単純化して構築できます。 グループは他のモデラーで言うレイヤーに近いものです。 グループIDは文字列が使用できるので、ユニークな名前のグループを作成しておいて、他のモデル作成の部品ライブラリとして利用することができます。
- 入出力ファイルがテキストベースで仕様がオープンです。 3次元座標データに展開したデータ・・・すなわち3次元セルモデルデータ(3次元ソルバー解析ファイルの形状データ)としてはQic形式は、 汎用性の強い3次元セルモデルデータです。ので、他の形状データへの変換は容易です。 たとえば、QicファイルはFortranのフリーフォーマットで簡単に読み込むことができます
- 補助機能として、セルの面積*・体積*・重心*(幾何学重心と物理重心)・慣性モーメント*等の情報が得られます。 (* これらは、生成可能なすべてのセルで計算できる訳ではありません。)
- 従来のモデラーによくある「3次元モデルを作ってから、それをメッシュ分割する」という2段階方式をとらず、直接メッシュにより、モデルを作成する方式をとっています。
- OpenGLによるソリッド表示ができます。
Pの能力として制限を受けるものは、
- メッシュの細かくて多い(100,000メッシュ以上の)構造解析系のCAEのモデル作成。
- カラー情報などは保存することはできません。 (セルの属性としては、物性番号を割り当てることができます。)
- CADではありませんので、文字や補助線・寸法線・引き出し線を入れることはできません。
- NET Framework 等、他のライブラリは不要で、インストールしてライセンス認証をしますとすぐに使用できます。